ニッカカフェモルトは、ニッカウヰスキー株式会社が宮城県仙台市にある宮城峡蒸溜所で製造するウイスキーです。
麦芽本来の甘みや香ばしさがあり、なめらかな飲み口が特徴で、その味は欧州をはじめとする世界中の多くのウイスキーファンを虜にしています。
本記事では、ニッカカフェモルトの種類や味わい、おすすめの飲み方に加え、その歴史や製法にいても詳しくご紹介します。
ニッカカフェモルトの特徴・概要
カフェスチルで作られたモルト100%のウイスキー
ニッカカフェモルトは 、カフェスチル(カフェ式連続式蒸溜機) で蒸溜されたニッカ独自のウイスキーです。原料は品名にあるモルトを100%使用しています。
通常モルトだけを使うウイスキーを作るさいは、ポットスチル(単式蒸溜機)で蒸溜を行います。
連続式蒸溜機は一般的にグレーンウイスキーを蒸溜するために使われる蒸溜機です。
連続式蒸溜機に改良を加えたカフェスチルは旧式なため蒸溜効率は劣りますが、その分蒸溜液に原料由来の香味成分が残る特徴があります。
ニッカカフェモルトはモルトを原料としたウイスキーですが、カフェスチルを用いた作り方なためグレーンウイスキーに分類されています。
ちなみにカフェ式連続式蒸溜機のカフェとは、発明者のイーニアス・カフェ氏の名前からつけられたもので、ニッカカフェモルトのカフェもここから来ています。
※日本語でモルトは麦芽、グレーンは穀物を意味します。
カフェオレのような香りとビター感のある味わい
ニッカカフェモルトは香り立ちが強く、樽香に加え、カフェオレのような香り、ハチミツのような甘い香りがするのが特徴です。
飲み口はなめやかで、味わいはビター感を強く感じることができます。
バニラの甘い風味やビターチョコのほろ苦い甘さもあり、それに加えて、樽香の持つウッディ感も味わえます。
飲み口がなめらかという点では、女性の方や普段ウイスキーに飲み慣れていない方におすすめです。
栄誉ある賞を受賞
ニッカカフェモルトはこれまでに栄誉ある賞を2つ獲得しています。
その1つが「THE MOST INNOVATIVE SPIRITS LAUNCH OF 2014」です。
直訳すると、2014年の最も革新的なスピリッツの発売、となります。
こちらは英国のスピリッツ専門誌「THE SPIRITS BUSINESS」において、2014年に発売された全てのスピリッツの中から選ばれた賞です。
ニッカカフェモルトのモルトウイスキーをカフェスチルで作り上げる斬新な手法と、芳醇な香味を持つウイスキーとしての仕上がりが高く評価されています。
もう1つが「International Spirits Callenge 2017、グレーンウイスキー部門カテゴリー最高賞”トロフィー”」です。
「International Spirits Callenge(ISC)」とは、毎年イギリスの酒類専門誌「DRINKS INTERNATIONAL」が主催している世界的な酒類品評会です。
部門はウイスキーの他にもジンやウォッカ、テキーラ、ブランデーなど様々で、エントリーされたものの中からそれぞれ金賞、銀賞、銅賞などが選ばれます。
トロフィーは金賞の中から選ばれた最高賞です。
※ニッカブランドがISCにおいてトロフィーを受賞したのはニッカフェモルトも含めこれまでに5度あります。
- 竹鶴21年ピュアモルト(2009年受賞)
- フロム・ザ・バレル(2015年受賞)
- ニッカカフェウォッカ(2018年受賞)
- 竹鶴25年ピュアモルト(2019年受賞)
ニッカカフェモルトのおすすめの飲み方は「ストレート」
ニッカカフェモルトのおすすめの飲み方はストレートです。
カフェスチルによる蒸溜から生まれるウイスキーの甘さや芳しさを堪能するには1番の飲み方です。
飲み口もなめらかなので、抵抗なく飲むことができます。
また、ストレートで飲んでみた後は加水して飲むこともおすすめです。
加水すると、香り立ちがさらに増します。ビター感やバニラ風味の甘さ、樽香のウッディ感もより味わえます。
他にも飲み方は色々ありますが、ハイボールはあまりおすすめできません。
ハイボールをおすすめできない理由は、ニッカカフェモルト特有の香りとビター感が弱くなってしまいます。
ニッカカフェモルトを飲むさいは、まずはストレートで試してみてください。
ニッカカフェモルトの種類
ニッカカフェモルトは単一の商品であるため、ここでは同じくニッカから出ているカフェシリーズの商品をご紹介します。
カフェシリーズはウイスキーだけでなくジンやウォッカも作られています。
ニッカカフェグレーン
ニッカカフェグレーンはニッカカフェモルトと同じく、カフェスチルによって作られたウイスキーです。
ニッカカフェモルトとの違いは原料にあり、モルトだけを使ったニッカカフェモルトに対し、ニッカカフェグレーンはとうもろこしや小麦などの穀物を主に使って作られています。
香りはチョコレート、バニラ香、しっかりめの樽香を感じ取ることができます。
味わいはキャラメルやハチミツのような甘さがあり、余韻はすっきりです。
2015年のISCにて金賞を受賞しています。
ニッカ カフェジン
ニッカカフェジンはカフェスチルから作られる蒸溜液と柚子や甘夏などの和柑橘、山椒や林檎を合わせたジンです。
香りは山椒の強いスパイシーさと和柑橘の爽やかさを感じることができます。
味わいにも山椒のスパイシーさがあり、後から柑橘系の甘さが来ます。
ニッカ カフェウォッカ
ニッカカフェウォッカはカフェスチル作られる蒸溜液を複数ブレンドしたウォッカです。
香りは、麦芽のフローラルな香りと、とうもろこし由来のキャラメルのようなコクのある甘い香りがします。
とろりとした飲み口でコクと甘さがあります。
冒頭でもご紹介しましたがニッカカフェウォッカは2018年のISCにてトロフィーを受賞しています。
2017年のニッカカフェモルトに続き、カフェシリーズとして2年連続の受賞です。
ニッカカフェモルトの蒸留所・歴史
ニッカカフェモルトは日本より一足早い2013年12月にフランスを中心に欧州で先行発売されました。
その後2014年6月に日本でも販売されています。
同じカフェシリーズの、ニッカカフェグレーンは2012年に欧州で先行販売され、2013年の6月から日本でも販売されました。
ニッカカフェジンとニッカカフェウォッカは2017年6月にそれぞれ日本で販売されています。
ニッカウヰスキー株式会社が最初に販売したウイスキー「ニッカウヰスキー」は1940年に販売されており、現在では知名度のある「竹鶴」も2000年の販売です。
ニッカウヰスキー株式会社の販売の歴史から見ても、ニッカカフェモルトなどのカフェシリーズは比較的新しい銘柄だと言えます。
ちなみにニッカの由来は前身の大日本果汁株式会社を略した「日果」からつけられたものです。
ニッカカフェモルトは近年のウイスキーブームの影響で、ウイスキーとその製造に必要な原酒の安定供給が難しくなり、2019年2月下旬をもって店頭在庫切れになり次第休売となっていましたが、同年の11月以降より販売を再開しています。
ニッカカフェモルトの製法
ニッカカフェモルトは冒頭でもご紹介した通り、カフェスチル(カフェ式連続式蒸溜機)によって製法されています。
蒸溜機はお酒を作る過程で欠かせない機械です。
蒸溜とは液体を熱して、発生した蒸気を冷やすことで、より純度の高い液体にすることをいいます。
お酒における蒸溜はアルコール度数を高めるために行われるものです。
ウイスキーを作る過程では、まず原料を糖化させ、酵母を加えて発酵させます。
それから蒸溜機を使い蒸溜させ、木製の樽に詰めて熟成させながら作り上げていきます。
蒸溜機には単式と連続式の2種類があり、前者はポットスチル、後者はコラムスチルとも呼ばれています。
ウイスキー作りにおいては、一般的にモルトを原料とする場合は単式のポットスチルを使い、グレーンを主な原料とする場合は連続式のコラムスチルが使われます。
コラムスチルはポットスチルと比べ、効率的で時間がかからず、大量生産に向いていますが、お酒の風味が残りにくくなるのが特徴です。
カフェスチルは1830年頃に従来のポットスチルを改良したもので、生産効率は劣ってしまいますが、原料の風味を残すことができます。
カフェスチルが開発された後に、ポットスチルも続々と新しいものが誕生したため、カフェスチルは希少な存在となってしまいます。
現在でもカフェスチルが使われていることは珍しいことです。
ニッカカフェモルト好きにおすすめウイスキー
ニッカカフェモルト好きにおすすめのウイスキーを2本ご紹介します。
ニッカカフェモルトのように、甘さの際立つ香りと口当たりの良さが感じられるウイスキーを厳選しました。
ニッカ伊達
ニッカ伊達はニッカカフェモルトと同じく宮城峡蒸溜所で作られるブレンデッドウイスキーです。
宮城県限定のウイスキーですが、現在はネットでの購入もできます。
ポットスチルで作られた宮城峡モルト原酒、カフェスチルで作られたカフェモルト、カフェグレーンがブレンドされています。
青リンゴのようなフルーティな香りとメープルシロップのような甘い香りがあり、味わいはバニラ風味の甘さの後にビター感が感じられます。
全体的に味の整ったウイスキーです。
エドラダワー10年
エドラダワーはスコットランドの南ハイランド地方で作られるシングルモルトウイスキーです。
蒸溜所はスコットランドで最も小さく、ウイスキー作りも3人のみで行なっています。
そのため年間の生産量も9万Lと業界最小です。
ニッカカフェモルトのように、飲み口がなめらかでビターチョコを思わせるほろ苦い甘さが感じられます。
まとめ
ニッカカフェモルトについて解説させていただきました。
モルトのみを原料としたものを、カフェスチルによって作り上げる方法は他に類を見ません。
ニッカウヰスキーが生み出したその味をぜひ1度試してみてください。