オーヘントッシャンは、シングルモルトとしては珍しいクセのないクリアな口当たりと、バーボン樽由来の上品なバニラの香りがとても飲みやすいスコッチウイスキーです。
伝統的な3回蒸溜によって造られるライトでなめらかなオーヘントッシャンは、女性にも人気があり、シングルモルトの入門用としてもおすすめです。
今回はオーヘントッシャンの種類や味わい、おすすめの飲み方をご紹介します。
オーヘントッシャンの特徴・概要
オーヘントッシャンとはスコッチウイスキーの6大産地のひとつ、ローランド地方で作られるローランドモルトです。
オーヘントッシャンは、ローランドモルトの伝統的な3回蒸溜をいまも行なっている、唯一の蒸留所です。
なめらかな口当たりとライトなボディで飲みやすいウイスキー
オーヘントッシャンの風味の特徴は、雑味やクセのないなめらかな口当たりとライトボディで飲みやすいウイスキーであることです。
非常に飲みやすいオーヘントッシャンは、普段ロックやハイボールでウイスキーを飲んでいる方でも、ストレートで飲めてしまうかもしれません。
ライトでなめらかな口当たりのオーヘントッシャンは女性からの人気も高く、その飲みやすさから「都会的でスタイリッシュなシングルモルト」と言われています。
クセや雑味がないので、カクテルのベースに使われることも多いです。
伝統を守り続けるオーヘントッシャン蒸溜所
オーヘントッシャン蒸溜所はスコットランドの大都市、グラスゴーから北西にわずか16kmのクライド湾を見下ろす高台にあります。
オーヘントッシャンとはゲール語で「野原の片隅」という意味ですが、オーヘントッシャン蒸留所の前には実際に野原が広がっています。
オーヘントッシャン蒸溜所最大の特徴は、ローランドモルトの伝統的な3回蒸溜を今も守り続けて製造していることです。
3回蒸溜を行うことで余計な雑味が落とされ、スッキリとしたライトなウイスキーが造られます。
発酵を行う際にも伝統的な木桶発酵槽を使用しているオーヘントッシャン蒸留所は、ローランドを代表する蒸溜所のひとつです。
オーヘントッシャンのおすすめの飲み方は「ストレート」
オーヘントッシャンのおすすめの飲み方は、ストレートです。
クセが強く強烈な印象があるシングルモルトですが、オーヘントッシャンはその印象を大きく変えてしまうほど、クセがなくなめらかなで飲みやすいウイスキーです。
アルコールの強いお酒が苦手な方でも、オーヘントッシャンであればストレートで飲めてしまうかもしれません。
それでもやはりストレートが苦手という方は、ウイスキー:水=2:1で割っても飲んでも香りと味わいを楽しめます。
「オーヘントッシャン アメリカンオーク」はライムを絞ったハイボールもおすすめです。
青リンゴのフルーティな風味と炭酸水の爽快感でスッキリと飲めて、余韻にはモルトの甘みを感じられます。
ロックにして冷やしてしまうと香りの広がりを閉じ込めてしまい、鉄分のような苦味も出てしまいます。
オーヘントッシャンの種類
オーヘントッシャン10年
「オーヘントッシャン 10年」は旧ボトルとしてかつては販売されていましたが、今では終売となっており、酒屋さんでもほとんど見かけることがなくなってしまっためずらしいボトルです。
ココアの甘さとハーブの爽快感のある香りです。
味わいはライトでスムーズな口当たりにドライフルーツのような甘さが後に残ります。
ほんのりとスパイシーな余韻がありますが、それほど長くないのでスッキリ飲めます。
オーヘントッシャン12年
オーヘントッシャンのスタンダードボトルである「オーヘントッシャン 12年」は、バーボン樽とシェリー樽で熟成させた原酒をボトリングしたウイスキーです。
厚みのある味わいと繊細な香りが特徴で、とてもエレガントな印象です。
味わいはアーモンドやキャラメルのような甘さと、シトラスの甘酸でスムーズな飲み口です。
ライトなボディですがしっかりとした余韻もある、非常にバランスの良いボトルです。
オーヘントッシャン 14年 クーパーズリザーブ
「オーヘントッシャン 14年 クーパーズリザーブ」は、北アメリカのバーボン樽で14年間熟成した原酒と、スペイン南部のオロロソシェリー樽を同期間熟成させた原酒をヴァッティングさせたボトルです。
香りは、オロロソシェリー樽由来のクルミやナッツなどのナッティさとカラメルの甘みが強くでています。
味わいは、カラメルや甘いアーモンドそしてクリームチーズなどの少し酸味がありながら、全体的に甘いウイスキーに仕上がっています。
こちらのボトルも免税店限定の販売のため、並行輸入商品としての購入になります。
オーヘントッシャン17年
「オーヘントッシャン 17年」は、バーボン樽で8年、サン・ジュリアンのワイン樽で9年熟成させたボトルです。
力強い赤ワインを産出していたサン・ジュリアンのワイン樽を使用することでオーヘントッシャンのライトな風味にボルドーワインのフレーバーが加わっています。
さらに17年の長期熟成により、ブドウなどのフルーティーさにバーボン樽由来のかすかな渋みも余韻として長く残ります。
この17年は既に終売となっているため、各店舗は在庫のみでの販売となっております。
オーヘントッシャン18年
1980年代に流通した「オーヘントッシャン 18年」ですが、今ではなかなかお目にかかれないめずらしいボトルとなっています。
ズムーズな口当たりはオーヘントッシャンらしさを感じますが、味わいにはデリケートさを感じます。
ミルクチョコレートやカラメルのような甘い香りが強く、少しのオイリーも感じます。
奥には干し草のようなドライっぽさもあります。
味わいは熟した柑橘類のようなトロっとした甘さと、カラメルソースとレーズンのシェリー樽特有のアクセントも感じられます。
オーヘントッシャン21年
「オーヘントッシャン 21年」は現在も流通しているオフィシャルボトルで、ローランドモルトの熟成樽のコクを味わえる、最高級品とも言われています。
バニラカスタードやプラムの濃厚なコクと、ドライフルーツやチョコレート、カラメルソースの甘さとレモンの爽快感を感じられます。
味わいはオレンジとチョコレートの爽やかですが濃厚な甘さで、その奥には淡い渋みもあり、非常にバランスが良いです。
余韻にはデザートのような長く甘いフィニッシュが続きます。
オーヘントッシャン クラシック
アメリカンオークのバーボン樽で熟成された「オーヘントッシャン クラシック」は、バニラやココナッツの甘い香りを力強く感じるボトルです。
オーヘントッシャンらしいスムーズな飲み口と、バニラやカラメルの上品で甘い香りが鼻をぬけ、ココナッツ風味が繊細さを引き立てます。
甘いだけではなく、後味にはミントの香りで爽快感があります。
オーヘントッシャン アメリカンオーク
「オーヘントッシャン アメリカンオーク」はバーボン樽特有の、上品なバニラの味わいと木樽のオーキーな香りが特徴のボトルです。
バーボン樽熟成の原酒を100%使用しているので、透き通った明るい色をしています。
カスタードプリンやシトラス、ミントスパイスの味わいに、ナッツやシナモンを感じます。
「オーヘントッシャン 12年」よりも、スパイシーさを強く感じます。
香りはバニラやココナッツの濃厚さと、青リンゴの爽やかな香りが口の中に広がります。
残念ながら2018年秋にサントリーから終売宣言が出されてしまいましたが、通販などではまだ手に入れることができます。
オーヘントッシャン スリーウッド
スリーウッドとは3つの木樽のことで、バーボン樽、オロロンシェリー樽、ベドロヒメネス樽で熟成させたことを意味しています。
ライトでクリアな風味のオーヘントッシャンですが、シェリー樽での熟成も加わっているため濃厚な木の香りが特徴です。
リッチですが軽い口当たりの味わいと、ダークチョコレートとブドウの香りが広がります。
余韻には焦げたキャラメルのような苦味あります。
オーヘントッシャン スプリングウッド
「オーヘントッシャン スプリングウッド」は、免税店限定で販売されているリッターボトルです。
オーヘントッシャン独特の3回蒸留後、アメリカのオーク材を材料としたバーボン樽で熟成しています。
このボトルは、マイルドな風味はそのままでシナモンのフレーバーが前面に押し出されているユニークな逸品です。
ラベルには樽を強調したイラストが載せられていますが、オーク材独特の癖はスプリングウッドでは感じられません。
マイルドな味わいはそのままで、シナモンとグローブの効いたスパイスチャイが特徴的です。
オーヘントッシャン ハートウッド
「オーヘントッシャン ハートウッド」は、ラベルにイラストされている2つの熟成樽が印象的なボトルです。
オロロソシェリー樽で熟成した原酒と、バーボン樽で熟成した原酒をヴァッティングしたオーヘントッシャンのシングルモルトです。
2種類の熟成樽を使用することで、豊かなコクのある味わいと深みのある甘味がバランス良く調和しています。
かすかに香るオークとバニラやチョコレートのような甘い香り、カラメルや甘いナッティの深い味わいが特徴です。
このハートウッドは免税店限定で販売されているリッターボトルです。
オーヘントッシャン バーテンダーズ モルト No1
「オーヘントッシャン バーテンダーズ No.1」は、アイリッシュウイスキーNo.1のジェムソンが主催したカクテルコンペティションで受賞した参加者12名によってボトリングされたウイスキーをブレンドしたボトルです。
それぞれの熟成期間は、1970年代から2010年までの5つの年代で構成されています。
使用している樽は様々で、シェリー樽、赤ワイン樽、ドイツ産のオーク材で作られた樽、ラフロイグウイスキーの熟成に使用した樽、ラム樽などで熟成されています。
このボトルの特徴としては、桜の花やフランス菓子パンのブリオッシュそして生姜などの複雑でなめらかな風味が感じられるところです。
ラベルの裏面に参加したバーテンダーの名前が刻印されています。
オーヘントッシャン蒸留所の歴史
オーヘントッシャン蒸溜所の始まりは定かではありませんが、1820年ごろにアイルランド移民が密造酒を製造するために建設したと言われています。
第二次世界大戦ではドイツ軍による空爆で破壊されてしまい、クラウド川は大量に流れ込んだウイスキーによって琥珀色に染まってしまいました。
オーヘントッシャン蒸留所の門をくぐるとそこには冷却水を貯める池があり、これも空爆によるものと言われていますが、実は戦争前から存在しているそうです。
その後、1974年にオーヘントッシャン蒸留所は再建されました。
1934年にサントリーによって買収され、現在に至るまでサントリーホールディングス傘下で経営されています。
オーヘントッシャンの製造方法
オーヘントッシャンの製造方法での最大の特徴は、伝統的な3回蒸溜を守っていることです。
モルトウイスキーは通常2回蒸溜させますが、オーヘントッシャンは3回蒸溜させることでアルコール度数が高くなり純粋なアルコール度数へ近づいていきます。
1回目は1時間、2回目は5時間、3回目は9時間の蒸溜を行うことで、余計な雑味が落とされ、クリアでスッキリとした軽やかな味わいに仕上がります。
この3回蒸留はローズバンク蒸留所も行なっていましたが、1993年に閉鎖されて以来、いまではオーヘントッシャン蒸留所が唯一行なっている製造方法となっています。
オーヘントッシャン蒸留所はローランド地方にありますが、実は仕込み水はハイランド地方にあるカトリン湖の水を使うという、珍しい特徴もあります。
オーヘントッシャン好きにおすすめのウイスキー
オーヘントッシャンは何といっても、ライトなボディとスッキリとした口当たりが特徴です。
オーヘントッシャン好きにおすすめのローランドモルトから、厳選したウイスキーをご紹介します。
グレンキンチー12年
「グレンキンチー 12年」は、ライトでスパイシーな味わいとフローラルなアロマが特徴で、食前酒として様々な料理に合う、人気のスコッチウイスキーです。
ローランドモルトらしいライトでまろやかな味わいと、レモンのような上品な香りでスッキリとしたまろやかな口当たりです。
オークの香りとドライな余韻が長く続きます。
ブラドノック10年
プラドノック蒸溜所は年に1〜2ヶ月しか稼働しないめずらしい蒸留所なので、流通量は世界的にもごくわずかしかありません。
桃やリンゴのフルーティなアロマと爽やかな柑橘類の味わいは、とてもバランスが良く口当たりもなめらかで飲みやすいので、オーヘントッシャン好きにはおすすめのボトルです。
スパイシーさとシトラスの爽やかな後味で、スッキリと飲める口当たりはローランドモルトらしさを感じます。
キングスバーンズ ドリーム・トゥ・ドラム
キングスバーンズは2014年に創業したばかりの新しい蒸留所です。
ローランドモルトらしいライトでスムーズな口当たりで、スッキリとしてすいすい飲めてしまうキングスバーンズは、ブランチやティータイムの時間に飲むウイスキーとしてもおすすめです。
香りは洋梨のフルーティーさとピーナッツクリームの甘さがあります。
熟したバナナのトロッとした甘さとパイナップルの風味に、後味はレモンの爽快感とジンジャーのスパイシーさを感じます。
非常にバランスの良いキングスバーンズはローランドの新星と呼ばれ、新たな幕開けを感じます。
まとめ
シングルモルトらしからぬクセのないすっきりとした口当たりのオーヘントッシャンは、決して味が薄いというわけではありません。
クリアな味わいだからこそ、フルーティな風味とバーボン樽由来の上品なバニラの香りを感じることができます。
アメリカンオークはバーボン樽の特徴を、スリーウッドはシェリー樽の特徴を味わいことができるオーヘントッシャンは近年人気となっています。
ライトなボディだからこそ飲みやすいストレートで、ローランドモルトの伝統を味わっていただきたいです。