ベンリアックは、スペイサイド地方で造られるシングルモルトウイスキーです。
シェリー樽のスコッチと言えば、マッカランやグレンファークラスと名を上げますが、ベンリアックは通好みのウイスキーです。
そんな知る人ぞ知るベンリアックについて、ご紹介します。
目次
ベンリアックの特徴・概要
ベンリアックの蒸溜所はエルギンの中心街から、5kmほど下ったところにあるスペイサイド老舗の蒸溜所「ロングモーン」の隣に建てられています。
ベンリアックの「ベン」はゲール語で「山」を意味します。
「リアック」は諸説ありますが、一説には「灰色がかった」「傷のある」という意味になります。
ベンリアックの味わい・香りの特徴
ベンリアックは、シェリー樽熟成の原酒を100%使用使った贅沢なスペイサイドモルトのため、しっかりとしたシェリーフレーバーと滑らかな口当たりがあります。
味わいはスペイサイドモルトらしいフルーティーな甘みやスパイス感を感じられるのが特徴です。
伝統的な製法
ベンリアックはフロアモルティングという伝統的な製法で造られています。
フロアモルティングとは、文字通り床でモルティングを行う方法で、ウイスキー造りの上で、重要な行程になります。
フロアモルティングという手間をかけて製造されているため、奥深い味わいが引き出せるという利点があります。
現在では、フロアモルティングを行っている蒸溜所は少ないのですが、ベンリアックは伝統的な製法を守り続けています。
ベンリアックおすすめの飲み方は「ストレート」
ベンリアックはシェリー樽を使って製造されているため、香りや味わいを感じやすいストレートで飲むことをおすすめします。
はちみつとオレンジを感じさせる香りに、バタークッキーの香ばしく優しい風味を存分に味わうことができます。
また、ベンリアックはピートが比較的強いウイスキーですので、さっぱりと飲みたい場合はソーダで割ってハイボールにするのも良いでしょう。
爽やかな味わいになり、気軽に飲めるのでとてもおすすめです。
ベンリアックの種類
ベンリアックには、通常のベンリアック以外に、ウッドフィニッシュシリーズというものがあります。
このシリーズは、ウイスキー業界の経験があり、有機科学者の顔もあるベンリアックの元マスターブレンダーのビリー・ウォーカー氏が樽にこだわったシリーズです。
ベンリアック10年
ベンリアック10年は、ベンリアックのメインでありフラッグシップでもあります。
バーボン樽原酒とシェリー樽原酒に加え、さらにアメリカンオークやフレンチオークの新樽原酒も足して複雑な風味を作っています。
香りはアロマやシナモンで、味わいはなめらかでバタークッキーの香ばしさを感じさせます。
ベンリアック12年 シェリーウッド
ベンリアック12年 シェリーウッドは、2017年に生産中止になりましたが、翌年の2018年末に復活を遂げています。
オロロソ樽、ペドロヒメネス樽でフィニッシュした原酒をヴァッティングして造られています。
香りはチェリーやオレンジの皮、かすかにシナモンで、味わいはブラックベリー、カカオの強いチョコレートになります。
ベンリアック キュオリアシタス10年
ベンリアック キュオリアシタス10年は、自家製麦したヘビーピートモルトを使ったウイスキーになります。
マスターブレンダーのレイチェル・バリー氏が最初に着手したボトルです。
3000円程度で購入できるのでコストパフォーマンスがとても良いです。
ベンリアック 20年
ベンリアック 20年は、長期熟成させたベンリアックの中で高価なウイスキーです。
長い期間熟成されているため、奥深い味わいです。
香りはバニラ、はちみつで、クリーミーな口当たりで、黄桃、トロピカルフルーツの甘みがします。
2005年のIWSCでゴールドメダルを受賞した世界が認める1本です。

ベンリアック ハート・オブ・スペイサイド
ベンリアック ハート・オブ・スペイサイドは、8~12年の熟成さらたモルト原酒を使ったベンリアックで、一番若いラインナップになります。
熟成に使っているのは、辛口のオロロソと極甘口のペドロヒメネス樽です。
この樽を使うことで、フルーティーかつフレッシュでスペイサイドらしさを楽しめるボトルです。
リンゴや洋ナシなどのフレッシュフルーツとヘザーハニーが混ざりあった爽やかで奥深い香りをだします。
ベンリアック バーニーモス
ベンリアック バーニーモスは、ベンリアックで仕上げたフェノール値50ppmのヘビーピート麦芽を使用したボトルです。
ちなみに「バーニーモス」の名前は蒸溜所近くのピート湿原に由来します。
スペイサイドモルトならではの複雑な味わいを楽しめるボトルです。
ベンリアック 15年 マディラカスク
ベンリアック 15年 マディラカスクは、バーボン樽で熟成した原酒をマディラ樽で追加熟成して仕上げたボトルです。
「マディラ」とは、マディラ島でつくられる酒精強化ワインのことです。
ベンリアック 15年 ペドロヒメネスシェリー
ベンリアック 15年 ペドロヒメネスシェリーは、シェリー酒最大の産地、ヘレス・デ・ラ・フロンテラにあるボデガでつくられた、ペドロヒメネスシェリーに使われた樽で後熟したボトルです。
その樽で熟すことで、蜂蜜のフレーバー、甘口のペドロヒメネスシェリー由来のレーズンやラズベリーなどの黒く赤いフルーツ、チョコレートの甘みが特徴的です。
ベンリアック 15年 ダークラムカスク
ベンリアック 15年 ダークラムカスクは、ジャマイカ産ダークラムに使われた樽で追加熟成したボトルになります。
香りはフィーの甘みとシナモン、ペッパーのスパイスで、味わいはアプリコット、シナモンから後半は葡萄へと変化するのが特徴的です。
ベンリアック 15年 トゥニーポートカスク
ベンリアック 15年 トゥニーポートカスクは、ポルトガルの酒精強化ワイン「トゥニーポート」が使われた樽で長期熟成させたボトルです。
クレーム・ブリュレのようなコクのある甘みとシナモンのスパイシーさとナッツの香ばしさを感じさせ、バタースコッチの芳醇な風味とピーチキャンディのフルーツ感のような贅沢な一本です。
ベンリアックの蒸留所・歴史
ジョン・ダフ社によって、ベンリアック蒸溜所は1898年に建てられました。
ちょうど同じ時期にブレンド業者のパティソンズ社が倒産してしまい、スコッチ業界全体が不況になり、創業からわずか1年という異例のスピードで製造停止になりました。
閉鎖中は隣にあるロングモーン蒸溜所の為に、モルティングを行っていました。
そこから、半世紀以上も閉鎖をしていました。
時が流れて、1960年代に入り、グレンリベット社が買収した事により、稼働を再開しました。
1978年にグレンリベット社の買収に伴い、シーグラム社の傘下に入ります。
1994年に初のシングルモルトをリリースしますが、1998年には伝統的なフロアモルティングを停止します。
2004年にはベンリアック・ディスティラリー・カンパニーが設立されます。ここで初めて独立系の蒸留所として営業を再開します。
2008年にグレンドナロック蒸溜所を、2013年にグレングラッサ蒸溜所と買収して勢いに乗ります。
ちなみに、ベンリアック、グレンドロナック、グレングラッサの蒸溜所は「ベンリアックファミリー」と呼ばれています。
同じ年に、伝統的なフロアモルティングを再開しています。
2016年にはブラウン・フォーマン社に買収されています。
ベンリアックの製造方法
ベンリアック蒸溜所は、精麦から自社で行っています。ノンピート麦芽とピートを使った麦芽を扱っているため、2つのタイプのシングルモルトウイスキーを製造しています。
ちなみに、ピートを使った麦芽で造られたウイスキーは、フェノール値が55ppmと高く、ヘビーピートといてる部類になります。
ベンリアック蒸溜所で一番の特徴的なことは、麦芽を発芽させる伝統的な製法のフロアモルティングで行っています。
フロアモルティングで行う麦芽の量は一度に10トンで、ほとんどがピートを焚かずに発芽をさせています。
フロアモルティングは、非効率的かつ重労働でありますが、手間が掛かる分「個性がだしやすい」というメリットがあります。
ベンリアック好きにおすすめウイスキー
ベンリアック好きに、ぜひ飲んでほしいウイスキーをご紹介します。
グレングラッサ
その兄弟分のウイスキーは、選び抜かれたシェリー樽で製法されており、甘く果実味のある風味とドライでナッツのような香りによる、芳醇なフレーバーが特徴です。
グレンドロナック
こちらのグレンドロナックも、ベンリアックファミリーの1つです。
赤ワインを熟成させたヨーロピアンオーク樽と、バーボン樽のそれぞれで熟成させた原酒を、さらにシェリー樽に入れ替えて熟成させています。
甘いキャラメルのような香りと、クリーミーな味わいが特長。
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まとめ
スペイサイド地方で造られるベンリアックについてご紹介しました。
蒸溜所が建てられてから、わずか1年で閉鎖された蒸溜所ですが、現在は奇跡的な復活をして稼働しています。
ベンリアックは、フロアモルティングという伝統的な製法をしていることで、とても味わい深いお酒です。
この知る人ぞ知るベンリアックをぜひ飲んでみてください。