キルホーマンは、スコットランド産のシングルモルトウイスキーです。
ウイスキーの聖地であるアイラ島で作られています。
味わいは実にアイラモルトらしく、フェノール値が50ppmと極めてピーティー&スモーキーです。フレッシュなフルーツ感とバニラの甘みが重なり、バランスの良さも際立っています。
また、アイラ島に124年ぶりに設立された蒸留所であることや、今では珍しい「ファームディスティラリー(農場型蒸留所)」としても有名です。
アイラ島で唯一、大麦の栽培から瓶詰めまでのウイスキー作りの全工程を自社で行っています。
キルホーマンの特徴・概要
キルホーマンという名前はゲール語で、教会の名前にちなんで名付けられたとされています。
アイラ島の西側に、そのキルホーマンの教会の跡地があります。
伝統的なファームディスティラリー
キルホーマン蒸留所は「124年ぶりの蒸留所」としてだけでなく、伝統的なファームディスティラリー(農場型蒸留所)であることも注目を集めています。
ファームディスティラリーとは、原料の大麦の栽培も行う蒸留所のことです。
今となっては非常に珍しいファームディスティラリーですが、実は19世紀のアイラ島ではごく一般的な蒸留所の姿でした。
キルホーマンは伝統にこだわり、そのかつてのファームディスティラリーを現代に再現しました。
「麦からグラスまで(ファーム・トゥ・グラス)」をモットーに掲げ、大麦の栽培から瓶詰めまでの全工程を自社で行い、理想とする「アイラ100%」のウイスキーを作り上げています。
海から一番遠い蒸留所
キルホーマン蒸留所はアイラ島の蒸留所の中で一番内陸にあります。
アイラ島の蒸留所はキルホーマンを除いて全て海沿いにあるので、非常に珍しい立地と言えます。
これは、キルホーマン蒸留所がファームディスティラリーであり、大麦の栽培を行っている農場を併設していることが理由です。
キルホーマン蒸留所はロッホサイド農場という広大な農場の中に建っています。
キルホーマンのおすすめの飲み方は「ストレート」
キルホーマンのおすすめの飲み方はストレートです。
まだ熟成年数の若いウイスキーなので、加水するとややぼんやりとした味になってしまうかもしれません。
まずはストレートで、こだわりにこだわって作られたキルホーマンを心ゆくまでお楽しみ下さい。
キルホーマンの種類
ウイスキーの基本的な飲み進め方は、同じ銘柄で異なる年代の種類を飲み比べていきます。
(縦飲み、垂直飲みといいます。)
理由としては、同じ銘柄であれば味やテイストの傾向が共通しており、比べたときにより違いがわかりやすいため自分の好みに合った年代を見つけやすいからです。
キルホーマン マキヤーベイ
キルホーマンマキヤーベイは、現在のラインナップにおいて、レギュラーボトル的な立ち位置のボトルです。
3年から5年熟成した若い原酒をヴァッティング、熟成樽はバーボンとオロロソシェリーバットの2種類とされています。
香りはアイラモルトらしく極めてピーティーかつスモーキーで、パンチ力があり、力強いです。
味わいはずっしりと骨太なスモーク感に、フレッシュなシトラスフルーツとバニラの甘みが三位一体となり、多層的で奥深い仕上がりとなっています。
奥にはほんのりと塩気やスパイシー感も感じられます。
また、熟成年数は少ないものの穀物感や麦の甘みがしっかりしているのも印象的です。
ちなみに「マキヤーベイ」とはアイラ島で最も美しいとされるビーチの名前で、キルホーマン蒸留所から半マイルほどの距離にあります。
ガツンとスモーキーではありますが、アイラ系独特の薬品臭さが比較的穏やかなので、アイラウイスキー入門にもオススメです。
キルホーマン サナイグ
キルホーマンサナイグは、マキヤーベイはバーボン樽の個性が前面に出ているのに対し、サナイグはオロロソシェリー樽熟成原酒を70%使用していることから、シェリーの特色を色濃く反映したボトルとなっています。
風味や味わいも対照的で、マキヤーベイは「力強く、パンチの効いたスモーク感」、サナイグは「シェリー由来の濃厚な甘みと潮っぽさの調和」で、マキヤーベイよりも大人しくマイルドな印象です。
華やかな香りにはキャラメル・マーマレードの甘さ・アイラらしいピート香とスモーク感が漂い、口に含むと塩キャラメルのような濃い甘み・爽やかな果実感が広がります。
「サナイグ」という名前の由来ですが、蒸留所の北西に位置する静かな入り江の名前にちなんでおり、美しく広がるサンドビーチ「マキヤーベイ」とは対照的な場所であることから名付けられたとされています。
キルホーマン イノーギュラル(INAUGURAL)
キルホーマン イノーギュラルは、2009年に発売された、ウイスキーファンが待ちに待ったキルホーマンのファーストリリースのボトルです。
「INAUGURAL(イノーギュラル)」とは、就任や就任式といった意味があります。
香りも味わいも典型的なアイラモルトで、ピート香と正露丸に例えられるヨードがかなり強いです。
その中に、レモンのフレッシュかつ爽やかな酸味が潜んでいます。
若いウイスキーゆえのアルコールの刺激がありますが、ほんのりとバニラも香り、荒々しくもクリーミーといった複雑さを楽しめます。
キルホーマン ロッホゴルム
キルホーマンロッホ・ゴルムは、年1回リリースされている限定ボトルです。
キルホーマンのウイスキーはほとんどがバーボン樽で熟成していますが、このロッホ・ゴルムはオロロソシェリーバットのみを使用して熟成しています。
バーボン樽が80%のキルホーマンにおいて、100%シェリー樽というのは大変貴重です。
香りはシェリー樽由来のドライフルーツやシナモン・フルーティーさに、アイラのピート香と潮風が重なり合います。
味わいはピート・スモーク感・塩キャラメルをベースに、プラムやダークチョコレートが広がります。
アイラ特有のピートとシェリーが見事に調和した、贅沢な1本です。
キルホーマン ポートワインカスク
キルホーマンポートカスクは、こちらのポートカスクも限定本数でリリースされたボトルです。
ポルトガル産酒精強化ワインのルビーポートの樽で熟成し、カスクストレングスにてボトリングされています。
ロッホ・ゴルムと同じく、バーボン樽以外の樽を使用しているポートカスクもキルホーマンで非常にレアな存在です。
ルビーポートから来るフルーティーさ・ベリーが際立っていて、香りはたっぷりとフルーツを使ったベリーのタルトを思わせます。
そこへ塩っぽいピートスモークやレモン、バニラが重なり、味わいはジャムやバニラといった濃厚な甘みにシナモンがアクセントとなっています。
全ての期間をルビーポート樽で熟成することによる、キルホーマンのスモーク感とルビーポート由来の甘く赤いフルーツの見事な調和が魅力です。
キルホーマン ソーテルヌカスク
キルホーマンソーテルヌカスクは、世界で限定10000本のリリース、日本では480本の限定入荷のボトルです。
バーボン樽で5年間熟成した後に、世界三大貴腐ワインの1つであるボルドーの「ソーテルヌワイン」の空き樽で5ヵ月間の追熟を施しています。
香りにはアイラモルトらしいピートスモークと潮風がしっかりと感じられ、華やかなシトラス・トロピカルフルーツ・バニラも漂います。
味わいは、ソーテルヌワイン樽由来の白ブドウのねっとりとした甘みとほんのり甘じょっぱい蜂蜜の風味が特徴的です。
キルホーマンのピートスモーク、バーボン樽、ソーテルヌワイン樽の絶妙な調和が、豊かで芳醇、リッチな1本に仕上げています。
キルホーマン フィノシェリーカスク
キルホーマンのフィノシェリーカスクは銘柄名のとおり、スペインのミゲル・マルティン社のフィノシェリーカスクの空き樽を熟成に使用しています。
このフィノシェリーカスクで熟成することで、スモーキーでヘビーなピーティーな中に青リンゴやシトラスのフルーティーな香味が加わっています。
ウイスキーの熟成で使用されるシェリー樽のほとんどは、オロロソシェリーですがフィノシェリーで熟成されたウイスキーはこのボトル以外にほとんどありません。
珍しい熟成樽でつくられたアイラモルトですので、この機会に試してみてはいかがでしょうか。
このボトルは、全世界中で10,500本のみの限定品でさらに日本へは660本だけの入荷ですから、品切れに注意が必要です。
キルホーマン スモールバッチ No1
キルホーマンのスモールバッチNo.1は、日本限定のスモールバッチボトルです。
これは、キルホーマン蒸留所の創業者アントニー・ウィルズのアイデアから生まれた企画品です。
最大の特徴は、3つの樽で原酒を製造しているところにあります。
さらに、原酒製造時の樽の使用比率を決めており、それぞれバーボン樽を70%、マデイラワイン樽を25%、シェリー樽を5%としています。
これにより、スモーキーでピーティーなアイラモルトでありながらダークチェリーやブラックベリーの味わいが広がっています。
そして、フィニッシュにはフルーティーでチョコレートのビターな余韻が残ります。
キルホーマン ブランブル リキュール
アルコール度数19%のリキュールでありながら、アイラ島のピート感も楽しめるのがブランブル リキュールです。
キルホーマンのニュースピリッツにブラックベリーなどのキイチゴを浸漬しているため甘酸っぱさが際立っています。
しかし、フェノール値50ppmというキルホーマンのアイラモルトのニュースピリッツを使用しているブランブル リキュールは珍しいボトルです。
元々、蒸留所のビジター向け限定で販売されていましたが、現在ではボトルのデザインが一新されて一般でも購入できるようになっています。
アルコール度数が低いので、アイラモルトの入門編的な存在です。
キルホーマン 2010 ヴィンテージ
キルホーマンの2010 ヴィンテージは15,000本だけリリースされた限定品で、日本へは840本だけ入荷されているボトルです。
バーボン樽と3種類のオロロソシェリー樽を使用することで、複雑な奥行きのあるフレーバーを実現しています。
香りは、キルホーマンのアイラモルトが醸し出すピートスモークにレモンゼストの爽やかでフルーティーなアロマ、焼きたてのパンの上で溶けたバターと、シナモンの甘い香り。
味わいは、スモーキーでピーティーな中にバナナのまったりとした甘さが残ります。
希少なボトルですので、見逃さずにテイスティングしたいボトルです。
キルホーマン STRカスク
世界中の蒸留所でコンサルティングをおこなっていた故ジム・スワン博士が考案した樽の再利用方法がSTRです。
Shaving(シェービング)、Toasting(トースティング)、Re-Charring(リチャーリング)という3つの工程により、赤ワイン樽をウイスキーの熟成として再利用することで樽の原料であるオーク材の風味を最大限引き出すことができます。
キルホーマンでは、2012年にヴィンテージした原酒をこのSTR樽に詰めることでSTRカスクとしてリリースしました。
このSTRカスクは、世界14,500本の限定リリースで日本への入荷は840本です。
アイラのピートスモークにオークの風味とフルーティーなフレーバーがミックスされた逸品です。
キルホーマン アンビュラック9年
キルホーマン蒸留所での製造過程のちょっとした手違いで偶然うまれたのがアンビュラック9年です。
そのため、通常リリースとは異なり1度だけの限定リリースのボトルです。
アンビュラック9年は、製造時に誤ってブレンドしてしまったマキヤ―ベイ用の原酒とポートカスクの原酒を数種類の樽を使用して追熟しています。
これにより、ポートカスクのフルーティーでクリーミーな甘味にピートスモークやドライフルーツそしてシトラスのフレーバーがパランスより調和されています。
とても間違いでうまれたとは思えないほどの香味をアンビュラック9年では実現しています。
ただし、1度きりの限定リリースのため日本へは600本しか入荷されていません。
キルホーマンの蒸留所と歴史
キルホーマン蒸留所は2005年設立、アイラ島に124ぶりに誕生した新しい蒸留所です。
創業者はアンソニー・ウィルス氏とロッホサイド農場のオーナーであるマーク・フレンチ氏です。
アンソニー氏は伝統的な生産スタイルと「100%アイラ産」にこだわり、蒸留所での大麦栽培を可能とするべく、農家のマーク氏がウイスキー作りに携わることとなりました。
蒸留所は、ロッホサイド農場の中の古い建物を改築して建てられています。
2005年12月に初蒸留、2009年に待望のファーストリリースのボトル「INAUGURAL」が発売されました。
その後も続々と評価の高い良質なウイスキーをリリースしています。
キルホーマンの製法
キルホーマン蒸留所は、一般的な蒸留所とは異なる非常に特徴的な蒸留所です。
「麦からグラスまで(ファーム・トゥ・グラス)」をモットーとした、こだわり尽くしのウイスキー作りが行われています。
まず、大規模蒸留所が建ち並ぶアイラ島では珍しいマイクロ・ディスティラリー(小規模蒸留所)ということです。
その規模はアイラ島最小で、年間生産量は約9万リットルと、カリラの約660万リットルやラフロイグの約300万リットルと比べるといかにキルホーマンが小規模であるかが分かります。
そして、一番の特徴と言えるのが「ファームディスティラリー(農場型蒸留所)」であることです。
伝統的な生産スタイルにこだわるキルホーマンは、かつて島で一般的であったファームディスティラリーを今の時代に再現しました。
ファームディスティラリーでは、ウイスキーの製造を、原料となる大麦の栽培から行います。
2011年にはボトリングの設備も整い、キルホーマン蒸留所では大麦栽培~蒸留・熟成~瓶詰めというウイスキーの製造の全工程を一貫して行えるようになりました。
これにより「麦からグラスまで」のモットー通りとなり、理想とする「100%アイラ産」のウイスキーの生産を可能としています。
現在、使用する大麦の約25%が自社栽培のもので、あとはポートエレン製麦所から購入したものです。
まだ「自社栽培の大麦100%」とはなっていませんが、アイラ島の大麦だけを使用することにはこだわりを見せています。
また、この自社栽培の大麦に対して伝統的なフロアモルティングを行っている点も特徴の一つで、フロアモルティングは今、100近くあるスコットランドの蒸留所において7カ所でしか行われていません。
マイクロ・ディスティラリーらしく、設置されているポットスチルもかなり小さいもので、初留3230リットル・再留2070リットルの小さなポットスチル1組のみとなっています。
少人数の職人たちによって、伝統的で丁寧なウイスキー作りが行われているのがキルホーマン蒸留所です。
キルホーマン好きにおすすめウイスキー
キルホーマン蒸留所はこだわりのウイスキー作りを行う、アイラ島では珍しいマイクロ・ディスティラリーです。
同じく、マイクロ・ディスティラリーで作られる“知る人ぞ知る”ウイスキーを紹介します。
ベンロマック
スコットランド産のシングルモルトウイスキーです。
ベンロマック蒸留所はスペイサイド地方で最小の蒸留所で、5人以下の少人数で操業しています。
スペイサイドモルトとしてはスモーキーであり、レギュラーボトルとは別にヘビーピートタイプのボトルも流通していますのでアイラ好きにもオススメです。
イチローズモルト
日本の知る人ぞ知るマイクロ・ディスティラリーと言えば、イチローズモルトの秩父蒸留所が挙げられます。
年間生産量は約6万リットルとキルホーマンよりも少ないです。
とても小さな蒸留所でありながら、そこで作られる上質なウイスキーは世界的な人気も高く、常に入手困難な状態です。
通常、秩父蒸留所ではピートを焚きませんが「イチローズモルト 秩父 ピーテッド」という限定ボトルがリリースされています。
フェノール値は50ppmとキルホーマンとほぼ同じで、しっかりとピーティー&スモーキーです。
長濱ニューメイク ヘビリーピーテッド
長濱蒸留所は日本で最小規模の蒸留所で、2016年に創業したばかりなのでオフィシャルボトルとなる予定の原酒はまだ熟成中です。
そのため、ニューメイク(樽詰め前の蒸溜したてのウイスキーの原液)を数量限定でこれまでに数回リリースしています。
こちらの「ヘビリーピーテッド」のフェノール値はラフロイグやアードベッグと同等程度で、極めてピーティーです。
一般的なウイスキーとはまた違う、荒々しいニューメイクをぜひ味わってみて下さい。
まとめ
キルホーマンというウイスキーについて詳しくなれたのではないでしょうか?
キルホーマンは初蒸留が2005年というまだまだ若いウイスキーでありながら、アイラらしいどっしりとしたピートとほどよい熟成感を堪能できる、非常に完成度の高いシングルモルトです。
果たして、熟成年数を重ねていくとどんな味わいとなるのか、これからが楽しみなウイスキーでもあります。