トマーティンは、スコットランドで作られているシングルモルト・ウイスキーです。
この記事では、トマーティンの味わいや香りの特徴、歴史や製造方法などを紹介します。
おすすめの飲み方や種類ごとの特徴を掲載しているほか、記事の最後にはトマーティンがお好きな方におすすめのウイスキーの提案なども行っています。
是非ウイスキー選びの参考にしてみてください。
トマーティンの特徴・概要
トマーティンは、スコットランドにある「トマーティン蒸留所」で製造・販売されているブレンデッド・ウイスキーです。
元々トマーティンは「BIG T」などのブレンデッド・ウイスキー用キーモルトとして生産されていたウイスキーでした。
しかし今日ではシングルモルト・ウイスキーとしての販売も盛んに行われるようになっています。
味の特徴
トマーティンはレーズンやプラムなどのドライフルーツやカラメルなどの甘みが強く、辛さや渋みの少ないウイスキーです。
日本人好みの癖が少ない味わいなので、ウイスキー初心者にもおすすめできます。
香りの特徴
トマーティンは全体的に癖が少なく、甘いシェリー樽由来の香りが強いウイスキーです。
焦がした樽のスモーク香やウッディさもわずかに感じられます。
喉ごし・フィニッシュの特徴
トマーティンはアタック時にフルーツの甘い香りが強く現れたあとに、麦やウエハースなど穀物由来の甘さが感じられるウイスキーです。
フィニッシュ時には樽の奥底にあるウッディな風味が押し寄せ、樽由来の香味が余韻として長く続きます。
トマーティンのおすすめの飲み方は「トワイスアップ」
トマーティンのおすすめの飲み方は「トワイスアップ」です。
このウイスキーをトワイスアップにすると、ナシや蜜のような華やかさのある香りがふわっと花開きます。
加水しすぎるとやや水っぽくなってしまう傾向にあるので、トワイスアップに使う水の量は通常よりやや控えめにするのがコツです。
トマーティンの種類
ここではトマーティンの種類を紹介しています。
現在主に販売されているトマーティンはノンエイジ品3種・エイジ品4種・2017年リリースの「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァ―チューズ」シリーズ5種の計12種です。
トマーティンのノンエイジ品3種
ノンエイジ品はブレンダーの個性や力量が最も問われる、世代を超えたヴァッティングが可能なボトルの総称です。
ここではトマーティンのノンエイジ品3種を紹介しています。
トマーティン レガシー
「トマーティン レガシー」はトマーティンの最もスタンダードなノンエイジボトルです。
若い原酒由来の刺激感あるフレッシュな味わいが特徴で、新鮮な柑橘のフルーティーな甘さと香りを楽しめます。
余韻は長く、砂糖を加えないココアのようなビター感と香ばしさが程よく続きます。
トマーティン ク・ボカン
「トマーティン ク・ボカン」はトマーティン初のピーテッド麦芽を使用したボトルです。
青リンゴやオレンジ、グレープフルーツのような爽やかなフルーツ香とカステラのような甘さ、その奥にある穏やかなスモーク香と胡椒のようなスパイシーさが特徴です。
トマーティン カスクストレングス
「トマーティン カスクストレングス」は、冷却ろ過していない原酒をバーボン新樽とオロロソシェリー新樽で熟成し、ヴァッテイングしたボトルです。
冷却ろ過されていないため色合いや味が損なわれておらず、トマーティン本来の味わいを存分に楽しむことができます。
煮詰めたシロップのような濃厚さのある甘さと柑橘類の爽やかさに加え、クルミの香ばしさやショウガのような香りも楽しめるウイスキーです。
トマーティンのエイジ品4種
エイジ品は同じ世代以上のウイスキーのみをブレンドして作られた、味の均一化がはかられているボトルの総称です。
ここではトマーティンのエイジ品4種を紹介しています。
トマーティン12年
「トマーティン12年」は最もスタンダードなトマーティンのエイジ品ボトルです。
バーボン樽に貯蔵した原酒をアメリカンオーク新樽に入れ替え、さらにシェリー樽で後熟させるという複雑な手法にて作られています。
シェリー樽特有のレーズンの香味やオーク樽・バーボン樽由来のバニラの香りが感じられる、複雑さをもったフルーティーで甘いウイスキーです。
トマーティン14年 ポートカスク
「トマーティン ポートカスク」は13年間リフィルバーボン樽で熟成させた原酒を、ポートワイン樽で1年後熟させたボトルです。
ワイン樽由来の濃密な香りと味わいがプラスされており、従来のトマーティンよりも果実感が強いウイスキーに仕上がっています。
フィニッシュはほろ苦く、余韻にはスパイシーな刺激があります。
トマーティン15年 モスティカル・フィニッシュ
「トマーティン モスティカル・フィニッシュ」はリフィルホグスヘッド樽で15年以上熟成された原酒を使用したボトルです。
とろりとしたシロップのような甘い口当たりのニュアンスと、完熟メロンのような芳醇なフルーツ香、シトラスのような爽やかな甘みが特徴のウイスキーです。
フィニッシュにはバニラクッキーのような甘さとカカオのビター感があり、余韻にはオーク香がゆったり長く香ります。
トマーティン18年
「トマーティン18年」はリフィルホグスヘッド樽で16年熟成した原酒を、2年間オロロソシェリー樽で後熟して仕上げたボトルです。
力強いシェリー香と樽由来のレーズンやプラムなどの香味が特徴で、長熟によりアルコールの刺激感は少なくまろやかな口当たりとなっています。
飲み進めていくにしたがって白胡椒やスパイシーなオーク香が顔を出し、フィニッシュ時には爽やかなシトラス香とカカオのようなビターさが現れます。
余韻はフルーティーで長く、キイチゴのジャムを彷彿とさせる甘酸っぱい香りが続きます。
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ」シリーズ5種
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ」は2017年にリリースされた、東洋五行説に着目し自然界の5つの元素をモチーフにして作られたシリーズボトルです。
このシリーズには「木(ウッド)・火(ファイア)・地(アース)・金属(メタル)・水(ウォーター)」の5種がラインナップされています。
トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ウッド
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ウッド」は原酒をアメリカンオークバーボン樽・リチャードワインフレンチオーク樽・リチャードワインハンガリアンオークの3つの樽に分けて熟成し、ヴァッティングしたボトルです。
2種のワイン樽で熟成された原酒のフルーティーでスパイシーな香味が強く感じられ、あまり麦芽特有の甘さはありません。
若さを感じるフレッシュなアロマとキャラメルのような甘さの後に訪れるフィニッシュや余韻には、アメリカンオーク樽由来のウッディでスパイシーな香りも感じられます。
トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ファイア
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ファイア」は強いバニラ香やカラメル感が特徴ある、オイリーで力強い味わいを持ったボトルです。
リチャーを行った樽で熟成した原酒を使用したこのボトルからは、メレンゲやホワイトチョコレート、青いバナナやハチミツリンゴなどの甘さが感じられます。
力強い味わいに反して口当たりはマイルドで柔らかく、飲みやすいウイスキーです。
トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ アース
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァ―チューズ アース」は、泥炭を土になぞらえピート感ある原料を使用したボトルです。
リフィル樽・バーボン新樽・シェリー樽の3つで熟成されたピーテッドモルト原酒をヴァッティング後、ボトリングしています。
オイリーで粘り気のある独特の飲み心地と柔らかなピート感、薬草を彷彿とさせるハーブ香が特徴のウイスキーです。
トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ メタル
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ メタル」は金属をコンセプトに、銅製のポットスチルにて原酒の蒸留を行いバーボン新樽で熟成されたボトルです。
クリーミーで麦芽香が強いウイスキーであり、柔らかい梨のような甘みと唇にぺたりと張り付く独特の余韻があります。
トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ウォーター
「トマーティン・ザ・ファイブ・ヴァーチューズ ウォーター」は水をコンセプトに制作されたシリーズボトルです。
コンデンサー内の冷却水として使用するオルタ・ナ・フリス川の温度が下がる冬に生産された、冷却速度の速い濃密で重厚感のあるスピリッツのみを使用しました。
熟成にはセカンドフィルバーボン樽とシェリー樽を50%ずつ使用し、原酒の個性を最大限に引き出しています。
シトラス系の香りとキャラメルの甘さがある、飲みやすくミネラル感の強いウイスキーです。
トマーティン蒸留所・歴史
トマーティンが作られている「トマーティン蒸留所」は1807年にインヴァネスの実業家の手により創立されました。
創業からわずか9年後の1906年に閉鎖に追い込まれますが、その後1909年に再び稼働を再開し、その後はスコッチブームの波に乗り目まぐるしい発展を遂げていきます。
最も勢力が強い時代には23基の蒸留器を所有し、ブレンデッド・ウイスキーである「BIG T」をはじめとした年間2200万リットルのスピリッツを生産していました。
現在のトマーティンのレシピはトマーティン蒸留所が栄えていた1960年頃に「ダグラス・キャンベル」氏によって確立されたものであるとされています。
しかし1980年代に入ると、過度な投資による設備の維持費不足と不況のあおりで再びトマーティン蒸留所は倒産の危機を迎えてしまいます。
その後トマーティン蒸留所は日本の「宝酒造」と「大倉商事」により「日本初の買収蒸留所」として買い取られ、なんとか事なきを得ることになりました。
日本企業が買収を行ったことで、トマーティンは1980年後半から日本上陸を果たすことになりました。
宝酒造が蒸留所の所有権を手放した今でも、トマーティンは日本の老舗食品卸業者「国分」によって輸入され、国内で流通しています。
トマーティンの製法
トマーティンは単一種の大麦麦芽から作られる、シングルモルト・ウイスキーです。
糖化槽で3回お湯を加えて抽出された大麦ジュースはポンプで熱交換器まで送られ、60℃から20℃まで冷却されます。
その後ジュースをステンレス製の発酵槽で54~110時間冷却し、バルジ型のポットスチルで蒸留後、樽詰めします。
樽は敷地内に14棟ある貯蔵庫で熟成されたあと、ヴァッティング・ボトリングを行われ出荷されます。
この時、原酒の管理の際にはバーコードを用いるほか、樽のヘッド色を変え、管理をしやすくしているようです。
トマーティン好きにおすすめウイスキー
ここではトマーティンがお好きな方におすすめのウイスキーを3つ紹介します。
トマーティンと似た甘いウイスキーや買収前のトマーティン蒸留所が作っていたウイスキーなどを取り揃えたので、トマーティンに似たウイスキーをお探しの際には是非参考にしてみてください。
グレンモーレンジ10年
甘く軽やかなフレーバーが特徴のトマーティンと似たウイスキーをお探しの方には「グレンモーレンジ10年」がおすすめです。
繊細なライトボディが特徴で、フルーティーな香りと麦芽の程よい甘さがあるので初心者にも飲みやすいウイスキーだといえます。
ザ・マッカラン12年
「トマーティン12年」のようなシェリー樽の要素が強いボトルをお探しの方には「ザ・マッカラン12年」もおすすめです。
ザ・マッカランは「シングルモルトのロールスロイス」と呼ばれる有名な銘柄で、その中でも「ザ・マッカラン12年」は最もスタンダードな入門ボトルとして人気を集めています。
濃厚なシェリー樽由来のドライフルーツ香とトフィーの甘さ、樽由来の軽いスモーク感とスパイシーさが感じられるウイスキーです。
BIG T
日本企業による買収が行われる前のトマーティン蒸留所が販売していたウイスキーを飲んでみたい方にはブレンデッド・ウイスキーの「BIG T」がおすすめです。
ひりつくような刺激感とカラメルや黒糖のような甘さがある、独特の味わいを堪能できます。
まとめ
この記事ではスコットランドの「トマーティン蒸留所」から販売されている、トマーティンを紹介しました。
癖が少なく甘めで飲みやすい、日本人好みの味わいが特徴のこのウイスキーが気になった方は、是非ご賞味されてみてください。